テーラー 人生の仕立て屋(MOVIE)



ギリシャ経済危機を時代背景に、屋台で商売を始めた紳士服の仕立屋を描く作品。

現代の世界中、特に国家破綻の危機に直面しているギリシャでは格安既製品が溢れ、採寸して服を作るということは殆どない。
主人公は親子で老舗のテーラーを営んでいたが、経営はまさに栄枯盛衰の危機的状況に陥っており、借金は払えずにお店は差し押さえられ、困った息子はお手製の屋台を使いストリートでテーラーを始める。

実は私の祖父は名古屋でテーラーを営んでいたということもあって、このテーマは見入ってしまった。

しかもこの作品は台詞が極限まで減らしているのが凄く良い。
フィンランドのアキ・カウリスマキ監督は勿論、日本の小津安二郎にも通じる静かな日本人的美的感覚に溢れた作品がギリシャから登場するなんて驚いた。
後半には人妻との情事なんかもあるのだが、そこでも台詞少なく非常に淡々とあっさり描かれているのがクールだし文学的で良かった。


そして映画のストーリーなのだけど、これはちょっとしたビジネスのケーススタディとして取り上げられても良さそうな程である。

主人公は時代背景もありテーラーで上手くいかなくなり、とある事をキッカケに一度も作ったこともない全くの畑違いであるウエディングドレスのクチュリエとして再起する。
それも、店舗が無いので最初はストリートで。そこからのストーリーは是非作品をご覧になってもらいたい。

挑戦するのに年齢は関係ない。何か新しい事を始めたいと思うタイミングの人なんかにとっても、面白くて刺激になる傑作だと思う。
この作品は主人公は何と50年間も地味な人生を歩んできたけれど、その歳であっても新しい事を始める事によって人生が輝き始め、その喜びはウエディングドレスの美しい縫製シーンと共に画面を彩り、観ている私たちに元気を与える。

私としても新しい事を始めるタイミングで良い作品に出会えて良かった。






コメント

人気の投稿